今まで、英会話に必要な
という力を伸ばすのにおすすめのテキストを紹介してきました。
次にご紹介するのは、英語の発音とリスニングを同時に改善する
『英語耳』
というテキストです。
我々日本人にとって英語の発音というのは実にやっかいな問題ですが、英語学習において発音は避けては通れない問題です。
以下、『英語耳』をおすすめする理由を説明していきます。
なぜ発音が大事なのか?
まず最初に「なぜ英語の学習において発音が大事なのか?」という点について確認しておきたいと思います。
英語を学習する際に発音を学ばなければならない理由は、実は2つあります。
【理由その1:より自然な発音をすることで相手に英語が通じやすくなる】
1つ目の理由は、皆さんもご存知の通り
より自然な発音をすることで相手に英語が通じやすくなる
からです。
ネイティブスピーカーが話す英語を聞くとすぐに気が付くと思いますが、英語には日本語には無い音がたくさんあります。
分かりやすい例で言えば、英語の「Thank you」は日本語の「サンキュー」とまったく違いますし、「water」と「ウォーター」も違います。

もしかすると
「カタカナ英語でも胸を張って堂々と話せば良い!」
という意見の方もいるかもしれませんが、英語本来の自然な発音をまったく無視したカタカナ英語は通じにくいだけでなく、話し相手に大変なストレスを強いるものです。
「ネイティブスピーカーと区別が付かないほど流暢な発音」を身につける必要はありませんが(実際、帰国子女でもない限りほぼ不可能だと思います)、実際に英語を使ってコミュニケーションをとろうとするなら、必要最低限の英語の発音のルールを知っておくべきなのは言うまでもありません。
【理由その2:発音が出来ると英語のリスニングがしやすくなる】
英語を学習する際に発音を学ばなければならない2つ目の理由は
発音が出来ると英語のリスニングがしやすくなる
からです。
少し意外に思われましたか?
ここからは『英語耳』の解説やイラストを引用しながら説明していきたいと思います。
まずは、『英語耳』冒頭に掲載されている著者の松澤喜好さんの言葉をご覧ください。
我々の脳には、知らない音を聞いたとき、知っている音に無意識のうちに置き換えてしまう性質があります。日本人がよく知っている音は「かな=カタカナ」です。つまり、多くの日本人は、英語を聞いたときにカタカナに置き換えて聞いています。知っている単語ばかりの英語でさえ聞き取れないのはこのためです。
(『英語耳』4ページより)
“What time is it now?” という英語が日本語の「掘った芋いじるな」に聞こえるという話しはあまりにも有名ですが、他にも
“Ah, hold me tight.” 「阿呆みたい」
“Sing a song.” 「寝具破損」
など、英語の音がつい日本語の音に聞こえてしまうという例は他にも沢山あります。
(参照サイト→空耳アワー!?日本語に聞こえる「空耳英語」のカオスな世界)
この様な「知らない音を聞いたとき、知っている音に無意識のうちに置き換えてしまう」という脳の性質は、言葉遊びという側面から見ると大変面白いですが、残念ながら実際の英会話ではコミュニケーションの足かせとなってしまいます。
こういった状態の脳を、著者の松澤先生は『英語耳』の中で下の図のように説明しています。
ちなみに、「コウモリ」を意味するbatの発音は【bət;】で、「しかし」を意味するbutの発音は【bˈæt】です。
この2つは、そもそも母音である【ə】と【æ】の聞き分けが出来れば
「batかbutかな」
「文脈からbatかな」
などと推測する必要も無いのですが、残念ながら多くの日本人は英語を聞く度にこのようなややこしい処理を頭のなかで行なっています。
一方、英語の発音をしっかりと身につけた人の頭の中はシンプルで明快です。
英語が直接英語として頭の中に入ってくるので、理解が速く、ストレスもありません。ナチュラルスピードの英語を理解するには、このように英語を英語の音として聞く必要があります。
いちいち
「バット・・・bat?but?」
と考えていては、実際の会話ではとても間に合いません。
そして、このように「英語を英語の音として聞く」ためには、実は「英語の発音を練習」することが大変有効なのです。
この点について、『英語耳』ではこんな風に説明されています。
正しい発音ができるようになると、その音を聞いたときにすぐに判別できるようになります。なぜかというと、英語を聞いたときにその音の口の形が頭に浮かぶようになるためです。結果として、リスニング力が向上します。
(『英語耳』17ページより)
もしかすると、このサイトを読んでいる皆さんはまだ「発音が出来ると英語のリスニングがしやすくなる」という点について半信半疑かもしれません。
私も実際に『英語耳』に取り組む前はそうだったので、その気持ちはとてもよく分かります。
ですが、『英語耳』に取り組んで3、4日経てば、おそらく皆さんも自分の英語のリスニングに変化が生じていることに気が付くと思います。
もし良ければ、同じ音声教材を
・『英語耳』をやる前
・『英語耳』を始めて3日後
・『英語耳』を始めて1週間後
に聞き比べてみてください。
音声教材は「聞いてもほとんど聞き取りが出来ず、意味もよく分からない」ぐらいの少し難しいものが良いと思います。
適当な音声教材が見つけられないという方は、好きな海外アーティストの歌でも構いません。
「やる前」「3日後」「1週間後」とテキストをやり込むに従って、音声教材(もしくは洋楽の歌詞)の中で聞き取れる単語や音の数が増えているはずです(「1回目よりも3回目の方が聞き取れる音が増えているのは当たり前だ!」と思う方は、同じくらいの難易度の別の音声教材を聞いてみてください)。
この実験をしてみれば、おそらくほぼ100%の方が「発音が出来ると英語のリスニングがしやすくなる」という言葉の意味を、身を持って実感できるでしょう。
以上のように、英語の発音のルールを学ぶと、英語の発音が改善されるだけでなく、リスニング能力も同時に高めることが出来ます。
そして英語の発音に関するテキストはたくさん発売されていますが、『英語耳』はその中でも特に「発音を学ぶことでリスニング能力を向上させる」という目的に特化したテキストです。
『英語耳』には単に英語の発音のルールが記されているだけではなく、リスニング能力を向上させるためのヒントや具体的な方法も数多く掲載されています。
ぜひ『英語耳』を通じて
・より自然な発音
・リスニング能力
の両方を手に入れてください。
「発音」と「リスニング」が出来ると、英語の世界がグッと広くなります。
amazonで見る→英語耳
「発音ができるとリスニングもできる」の具体例
前の段落で
「発音が出来ると英語のリスニングがしやすくなる」
と述べましたが、ここではこの点についてさらに具体的に説明したいと思います。
まずは下の文章を、出来れば声を出して読んでみてください。
これは英語圏ではとても有名な早口言葉で、「彼女は海岸で貝殻を売ってる」という意味の文章です。
これを、典型的なカタカナ英語で読むとこの様になるのではないでしょうか。
英語の発音に関する知識が無いと
・「彼女」のshe
・「海」のsea
の発音を使い分けることが出来ません。
そして「彼女」のsheと「海」のseaを使い分けて発音出来ない人には、sheとseaはどちらも「シー」と聞こえるはずです。
なぜなら、人間の脳には「知らない音を聞いたとき、知っている音に無意識のうちに置き換えてしまう」という性質があるからです(覚えていますか?)。
しかし、英語の世界ではsheとseaはまったく違う音です。
音声が聞ける辞書へのリンクを貼っておきますので、ぜひ2つの音を聞き比べてみてください。
単語の横にある「クイック再生」というボタンをクリックすると音声を聞けます(スマホで見ている方は「音声を再生」ボタンをタップしてください)。
・she(Weblio辞書)
・sea(Weblio辞書)
英語のネイティブスピーカーは必ずこの2つの音を使い分けますし、たとえネイティブでなくても、発音の基礎を学んだ英語学習者は、程度の差こそあれ必ず2つの音を区別して発音しようとします。
ぜひ皆さんも、英語の発音の仕方を学んでsheとseaの音を聞き分けてください。
一度sheとseaの音が聞き分けられるようになると、基本的にもう二度と
She sells seashells by the seashore.
が
シー セールズ シーシェルズ バイ ザ シーショア。
とカタカナで聞こえてくることはなくなります。
She sells seashells by the seashore.
という音が、英語としてダイレクトに耳に飛び込んでくるようになるのです。
そしてその結果、英語のリスニング能力が飛躍的に向上します。
sheとseaの音を聞き分けるための一番の近道は、自分でsheとseaの音を正しく発音出来るようになることです。
sheとseaの音を正しく発音出来るようになると、sheとseaという音の違いに対する感覚が敏感になり、最終的には聞き取りづらい環境(電話や騒がしい場所)でも相手の話している英語をリスニング出来るようになります。
このように、一見まったく正反対の能力のように思える「発音」と「リスニング」ですが、実はこの2つはコインの裏表のように、切り離すことの出来ない密接な関係にあるのです。
amazonで見る→英語耳
『英語耳』の構成
それでは、ここで『英語耳』の構成を紹介したいと思います。
各章の内容と、所々に掲載されている英語学習に関するエッセイなどを表にまとめましたので購入の参考にしてみてください。
タイトル | 内容 |
第1章 なぜ聞き取れないのか? | 英語の学習における「発音」の重要性を理解するための章。「英語耳」(日本語と同じように力を抜いていても英語をほぼ100%聞き取れる状態)を獲得するための道筋も解説されている。 |
第2章 発音バイエル 子音編 | 子音の発音を練習するための章。 |
第3章 発音バイエル 母音編 | 母音の発音を練習するための章。 |
第4章 発音バイエル R編 | Rの発音を練習するための章。 |
第5章 発音バイエル 音声変化編 | 会話などで生じる、英語の音が結合、変化、消音する感覚を練習するための章。 |
第6章 生の英語を使った学習法”Parrot’s Law” | 生の英語素材(歌や会話)を使った学習法「パロッツロー」のやり方を紹介している章。 |
第7章 英文読書のすすめ | 「語彙力」と「読解力」を養うための「英文読書」について解説している章。 |
あとがき | 『英語耳』出版にまつわる興味深いエピソードがたくさん紹介されている。 |
私の英語学習歴 | 著者である松澤喜好先生の英語学習遍歴が7つのエッセイにまとめられている。ちなみに松澤先生は日本生まれ日本育ち。 |
『英語耳』は英語の発音がテーマのテキストですが、「英文読書のすすめ」について丸々1章割かれているのが個人的に大変面白いと思いました。
読書を通じて英語力を上げる方法が、かなり詳細に解説されています。
絵本レベルの難易度の本も紹介されているので
「英語で読書なんて自分にはとても無理だ!」
と思っている方も、ぜひ目を通していただければと思います。
amazonで見る→英語耳
「発音バイエル」の具体的な内容
ここまでの説明で、「発音の重要性」、「発音ができるとリスニングができる仕組み」、「『英語耳』の構成」については、なんとなくイメージを掴んでいただけたかと思います。
この段落では、実際の『英語耳』のページをご覧いただきながら、どのように発音の練習(『英語耳』では「発音バイエル」と呼んでいます)をするかをご紹介します。
以下の画像は、発音の練習で一番最初に掲載されている[s]と[z]のページを撮影したものです。
まずは発音記号と口の中の構造図が掲載されています。
受験英語では発音記号はあまり重要視されていないように感じますが、これから英語の語彙を増やすにあたり、知っていると大変便利な知識です。
それぞれの発音方法を練習する際に、ぜひ一緒に覚えてしまいましょう。
そして口の中の構造図は、独学で発音を学ぶ際、とても参考になります。
『英語耳』にはCDが付属しているので、基本的にはそのCDの音を聞いて発音を練習しますが、思うような音が出ない時は自分の口がどのような形になっているか、構造図と比較してみてください。
続いて、発音のポイントが短くまとめられています。
英語のネイティブスピーカーに発音を習うのも素晴らしい学習方法ですが、具体的な発音の仕方やコツをこのようにじっくりと日本語で学べる点が、テキストを使った独学の良いところです。

次が『英語耳』のメインパートであるCDを利用した発音練習の部分です。
CDの音声を聞いて、聞こえてきた音をなるべく忠実に再現してみましょう。
最初はテキストを見ながら発音しますが、慣れてくるとテキスト無しで、CDの音声だけで練習出来るようになるはずです。
恥ずかしがらずに、なるべく大きな声(音)を出すのが英語の発音の上達のコツです。
CDは、同じ内容が「女性の声」、「男性の声」と2バージョン収録されていますので、女性は「女性の声」バージョン、男性は「男性の声」バージョンで練習した方が違和感なく学習が進められるでしょう。
最後は「Learn more」というタイトルで、それぞれの発音に対するより詳しい解説が掲載されています。
「日本語と英語の違い」や「日本人が陥りやすい発音のクセ」など、目からウロコが落ちるような話が多く、読み物としても大変面白いパートです。

発音の練習においては、何よりもまず自分で声を出してみることが一番重要です。
解説をいくら熟読しても、それだけでは英語の発音は上達しません。
ぜひ実際に自分の唇、舌、喉を使って英語の発音練習をしてみてください。
一度身につけた英語の発音は、一生使える財産です。
amazonで見る→英語耳
まとめ
以上、発音と同時にリスニングも出来るようになるテキスト『英語耳』のご紹介でした。
この記事の内容を簡単にまとめると以下のようになります。
・自分が発音できる音に対しては感覚が敏感になり聞き取りやすい
・発音を練習する際はCDを聞きながらなるべく大きな声でおこなう
ある程度英語を話せるようになった英語学習者の中でも、ヒアリングに関しては苦手意識を持っている人が多いようです。
「何を話すか?」は自分の意思でコントロール出来ますが、「相手が話す速さ」や「相手がどれくらい明瞭に話すか」はコントロール出来ないからです。
英語学習は「瞬間英作文」や「英文法」「英単語・英熟語」など、やらなければならない項目が多いので大変だとは思いますが、ぜひ「発音」にもある程度時間を割いてみてください。
英語の「音」が聞こえるようになると、英語の世界が一気に広がり、他の分野の学習効率もアップします。
最後に、『英語耳』の中で一番好きなフレーズを紹介してこの記事の終わりとしたいと思います。
結局、語学の学習の秘訣は「壮大な慣れ」です。
(『英語耳』6ページより)
『英語耳』が、皆さんの発音改善とリスニング能力の向上に役立てば幸いです。
amazonで見る→英語耳